投資するならどっち?金(ゴールド)投資信託・ETFのメリット・デメリット徹底比較!

青木博史

1.はじめに

昔から資産価値が高いものとして扱われてきた金は、投資対象として有名です。ですが、どのように金に投資すればいいかわからない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、金(ゴールド)の特徴と、比較的手軽に金に投資できる投資信託・ETFのメリット・デメリットを紹介したいと思います。

2.金ってどういう金融商品なの?

新型コロナウイルス感染症の影響によって経済の勢いは失速し、その先行きは不透明なままとなっています。そんななか、現物資産としてかつてから存在する金への投資ニーズが高まっています。

そもそも金は希少性の高い金属で、酸化しにくい、密度が高い、加工しやすいといった特長を持っていることから、物としての高い価値があるとされています。以下では、金の商品としての特徴を詳しく見ていきたいと思います。

2-1.金は有事に強い安全資産である

戦争やテロ、大規模な天災などの発生、世界あるいは国の経済不安といった有事においても、金価格が大暴落することは滅多にないため、金は「安全資産」や「代替通貨」と呼ばれています。

金は希少価値が高く、実体のある資産であり、信用を基盤に運用されている通貨や有価証券などと違って、その価値がゼロになることはありません。

国の財政悪化による通貨価値の下落や、景気後退によって株式相場が暴落するような局面においても、金は比較的安定した価格推移を期待できるという特徴があります。

2-2.株式や債券の値動きと相関性が低い

実物資産である金は株式や債券とは性質が異なる資産なので、金の値動きは株式や債券などの値動きと連動しにくいことで知られています。

そのため、金を価格の相関性が低い株式あるいは債券などと一緒にポートフォリオに組み入れることで、リスク分散効果を得られます。

2-3.貴金属投資の中で取引量が多く、もっとも値動きが安定している

金は、その美しさと希少性の高さから、古代より装飾品や金塊として加工・保有または投資されてきた長い歴史をもつ貴金属です。現在では、資産価値の高い貴金属として認識されているだけでなく、投資対象としての認知度も、貴金属の中で格段に高いと言っていい商品です。

貴金属投資家からも、金の人気はダントツに高く、安定した取引量や値動きを誇っています。

2-4.金地金や金貨を引き出すこともできる

金をはじめとする貴金属を販売する貴金属取扱業者や、金地金取引サービスを提供する主要ネット証券のうち、SBI証券とマネックス証券では、保有数量が一定量になると、金地金を引き出して、自宅で受け取ることもできます。

投資対象の金地金をネット証券でも引き出すことができるのは、不動の人気を誇り、流通量も比較的多い金ならではのサービスといえます。

3.金(ゴールド)投資とは?代表的な4つの手法

金(ゴールド)投資では、金の現物(金地金、金貨)、あるいは金価格などが対象指標になる投資信託またはETF、金から派生した金融商品などが主な投資対象となります。金投資のうち、個人投資家が取引しやすいものは主に下記の4種類です。

投資商品 投資対象 内容
現物投資 金地金(インゴット、延べ棒)
金貨(コイン)
現物をグラム数または金額を指定して
買付ける(スポット取引)
純金積立 金地金 金の現物を、同量または
同額で定期的に買付ける。
金投資信託 純金価格
純金ETF
金鉱企業銘柄のポートフォリオ
対象指標に連動する
パフォーマンスを目指して運用する。
金ETF 金地金価格、金先物価格 対象指標に連動する
パフォーマンスを目指して運用する

このうち、現物投資と純金積立は、従来から貴金属取扱業者が中心となって取引を行ってきました。現在、主要ネット証券のSBI証券や楽天証券、マネックス証券でも、金取引専用口座を開設すると金を取引することができます。

というわけで、意外にも金投資信託と金ETFは、一般の株式や投資信託と同じように、ネット証券の証券口座で取引できる金融商品なのです。

4.金投資信託と金ETFの違い

金投資の中でも、貴金属投資初心者が投資しやすいのは金投資信託と金ETFの2種類です。

金投資信託と金ETFはよく似た商品性をもち、いずれの商品も、どのネット証券からでも簡単に取引することができます。この章では似て非なる両者の違いについて、以下で簡単に解説します。

4-1.取引所に上場している金ETF、上場していない金投資信託

金投資信託と金ETFはどちらも、投資信託の形態をとっており、プロあるいは投資運用会社がファンドを設定し、運用と管理を行っています。対象指標が金価格や金先物価格などの金関連商品価格となっている点も同じです。

金投資信託と金ETFの最大の違いは、証券取引所に上場されている投資信託であるかどうかにあります。

金投資信託は基本的に、投資家とファンドを仲介する証券会社との相対取引になります。一方、国内の金ETFは東京証券取引所に上場しており、上場株式同様に市場取引が行われます。

4-2.株式に準ずるか、純粋な投資信託か

上場投資信託である金ETFは、株式と同じ扱いとなり、ネット証券で売買する際には、株式の取引手数料が課せられます。市場で常に取引されているため、リアルタイムでの売買により、時価で取引できるという特徴があります。

対して非上場の金投資信託は投資信託なので、証券会社が受け取る手数料として、投資信託の買付手数料と解約手数料を支払う必要が発生します。とはいえ、現在主要ネット証券では、投資信託の買付手数料と解約手数料は無料になっています。

金投資信託を含めた投資信託は、取引時間終了後にファンドの運用会社が計算した基準価額で取引されるため、いつ注文を出しても、基準価額1本での約定となります。

4-3.金投資信託のほうが金ETFより若干選択肢が多い

株式や債券などの個別銘柄のポートフォリオ、あるいは株価指数を投資対象とする一般的な投資信託には及びませんが、金関連商品を組み入れた投資信託は、金ETFより、選択できる銘柄数が若干多いという特徴があります。

2021年4月27日現在で、「金」あるいは「ゴールド」がファンド名に含まれる投資信託を検索すると、SBI証券は11件、楽天証券は6件、マネックス証券は6件、松井証券は7件、auカブコム証券は10件が抽出されます。

それに対して、東京証券取引所に上場している金ETFは全部で4件(うち1件は外国籍の金ETF)しかありません。

少しでも多い選択肢の中から金関連ファンドを選びたいならば、ネット証券を利用して、金投資信託を探すのがおすすめといえます。

5.金投資信託・ETFの3つのメリット

金投資信託や金ETFに投資するメリットとしては、「コストが安い」、「取引が簡単である」、「確定申告が不要になる」の3点が代表的です。

以下でそのメリットについてわかりやすく説明します。

5-1.コストが安い

金の現物(金地金のスポット取引、純金積立)を取り扱っているSBI証券の場合、取引手数料は買付手数料が約定代金の2.2%(税込)、楽天証券とマネックス証券の買付手数料は買付代金の1.65%(税込)、3社とも売却手数料、口座開設料、口座維持費は無料となっています。

金投資信託の買付手数料と解約手数料は、上述のように3社とも無料なので、実質的に信託報酬が主たるコストになります。年率1.0%を下回る安い信託報酬の金投資信託もあり、低コストで運用可能です。

金ETFについては、各社の株式取引手数料が適用されます。

SBI証券と楽天証券では、約定代金5万円までが55円(税込、0.11%に相当)、10万円までが99円(税込、0.10%以下)のように格安の手数料が設定されているので、口座管理料もかかりません。マネックス証券では約定代金10万円以下で110円(税込、0.11%)、口座管理料は無料となっています。

金投資信託と金ETFのうち、どちらの商品の、どの銘柄を選んでも、現物取引に比べてコストが安く済むか同等となるといえます。

5-2.取引には、使い慣れた株式や投信注文画面を利用できる

金投資信託は一般的な投資信託と同じ取引画面から売買の発注ができます。金ETFは、株式取引と同じなので、高機能トレーディングツールあるいはスマホアプリからでも注文が可能です。

金投資信託と金ETFのどちらも、日頃使い慣れている株式または投資信託の注文画面から注文できるので、気軽に手早く取引できるため便利です。

5-3.確定申告が不要、損益通算も可能

金投資信託や金ETFからあがる利益は、株式投資や投資信託、債券などと同じ譲渡所得であり申告分離課税の対象になります。そのため、ネット証券の源泉徴収ありの特定口座を利用して、確定申告不要にすることができるというメリットがあります。

たとえ金投資信託や金ETFから損失が出ても、確定申告不要のまま、同じ特定口座内の利益が出ている株式や投資信託などと損益通算することも可能です。

6.金投資信託・ETFの3つのデメリット

金投資信託と金ETFは、金地金価格や金先物価格を対象指標とするファンドを利用して、簡単に金地金や金先物に投資することができます。その反面、現物取引でないことによるデメリットもあります。

以下では金投資信託・ETFのデメリットについて解説します。

6-1.金地金や金貨を引き出すことはできない

貴金属取扱業者や、SBI証券、マネックス証券で、金のスポット取引や純金積立をすると、金地金が一定量になれば、現物を引き出して、自宅で保管することもできます。

一方の金投資信託と金ETFは、どれだけファンドを買い増しても、金地金を実際に引き出せないというデメリットがあります。

安全資産として、金地金を自宅の金庫に保管したいという人には、金投資信託や金ETFへの投資は適さないことをしっかり知っておく必要があります。

6-2.1銘柄のみではリスク分散効果をあまり期待できない

通常、投資信託やETFは多数の個別銘柄がポートフォリオに組み入れられているため、もともと資産分散、リスク分散の効果が期待できます。

しかし、金投資信託や金ETFでは、1件のファンド組入銘柄だけで99%超を占めるファンドが大半であり、金関連ファンドだけでは十分なリスク分散効果を得ることはできません。

金投資信託や金ETFに投資する際には、株式や債券など、さまざまな投資対象で組成された投資信託やETF、あるいは原資産が金以外の金融商品を組み入れて、ポートフォリオを構成することをおすすめします。

6-3.金投資信託は希望どおりの条件で取引できない

投資信託特有のデメリットでもありますが、金投資信託をはじめとする投資信託銘柄は、約定するのが夜間の1回のみとなります。組入銘柄の当日の評価額が確定して、ファンドの基準価額が算出されるまで約定しないので、日中の金地金や金先物の時価を念頭に置いて発注しても、そのとおりに約定することはありません。

取引価格にこだわって取引したい人は、金投資信託ではなく、リアルタイムで取引ができる金ETFを選ぶ方が良いでしょう。

 

7.まとめ|投資するならどっち?金(ゴールド)投資信託・ETFのメリット・デメリット徹底比較!

金は希少性が高いため資産価値があり、有事の際の安全資産としても認知されています。株式や債券の価格とは相関性も低いため、実質的に金に投資する商品を自分のポートフォリオに組み入れれば、有効なリスクヘッジが可能になる資産といえます。

コロナ禍の混乱の影響で金に対する投資ニーズが高まっており、現在、金の価格は上昇を続けています。

金への投資が気になっている方は、この記事を参考に投資信託のメリット・デメリットを比較しながら検討を進めてみてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です