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1.はじめに
最近は日本でも貯蓄から投資への流れが強まっています。NISAやiDeCoを活用し、資産運用を始めた人も多いのではないでしょうか。今回は資産運用における「通貨」についてお話ししたいと思います。
なかでも、特に貯金だけしている方におすすめしたいことは、日本円だけを持つのではなく、外国通貨を併せ持つことです。
投資初心者の方でも「知っている!」と、共通して口にするワードは、「資産分散」です。
資産を分散する必要は本当にあるのか、またその意味について考え、「資産がすべて日本円」がなぜ危険かについて解説します。
2.分散=通貨分散、迷わず「預金」を選ぶ日本人
幼少期にお金や運用についての教育を行わない日本では、給与所得で生活をするほとんどの人が、「資産=お金=紙幣」という連想でしか考えない傾向にあります。そしてその連想は、「無意識」のうちに、資産を「預金」という形で保有するのがもっとも安全であると、脳にインプットされていると言っても過言ではありません。
それは、「資産分散」のお話をする中で、皆さんにまず「預金」の話からしなくてはいけないほど、預金が一つの金融商品という位置づけであることに、気がついていない人が多いからです。「分散しなきゃ……」と思う人が大抵どのように分散投資するかといえば、「外貨」です。外貨でもさまざまな金融商品があるのですが、ほとんどの日本人がすることは「外貨預金」です。
日本人は、銀行にお金を「預ける」のが大好きな民族といえます。
ここで考えを切り替える必要があるポイントは「(外貨で)分散さえしていれば、安心」と漠然と思われていることと、「とにかく預金という商品が安全」と思い込んでいることです。この考え方を見直す必要があります。
3.外貨投資の基本は「為替」と「金利」 正しく理解ができる?
ではまず、「外貨」について考えてみましょう。
「外貨投資」という言葉があるように、確かに自国と自国以外の通貨を売買することで、資産を増やすことはできます。その要因は、「為替」です。為替は2国間の通貨の価値が日々変動することによって、購入時の為替価格と売却時の為替価格の差が、損益となります。
為替は、自国通貨である「日本円」と「外国の通貨」との「つなひき」のようなイメージをしてください。どちらかが強い弱いのバランスで、綱が動く様は、為替変動そのものです。
また「金利」については、高い政策金利レート国の国債を購入することで得られるもので、本来は「債券投資」で得られるものとして解釈すべきなのですが、多くの方が「外貨建て預金」や、「外貨建て保険」を通し、間接的に購入しているのが実態で、「為替」と「金利」を混同しているケースが多いです。ですから、ここではあえて「外貨投資」の内訳にしておきました。
金利は、債券の発行体が「利子」として払うもので、予想以上に景気が良かった、物価が上がった(インフレが起こった)からといって、その利率を上げてくれるものでもありません。購入時に約束したとおりの額が、約束した期日に支払われます。
外貨建て商品を購入した場合は、その商品の運用を行っている会社が、裏側でその通貨国の国債を購入しているとイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。その国債の金利水準に合わせた金利で、みなさんが購入した商品は設計されていますし、為替の影響は購入者である皆さんに、そのまま寄与します。
4.通貨を分散「しなければならい」のではなく、為替益を期待して分散する
この原理を考えると、円だけでなく外貨そのものや、外貨建て商品を購入することで、得られるメリットはあっても、「日本円を少なくし、外貨を持たなければならない」という理由にはならないでしょう。
それは、「円」が非常に信用できる通貨だからです。私たちは世界で信用力の高い国で生活をしていて、信用力の高い通貨を日常で使う通貨としています。ですので、円ではなく外貨で「持たなければいけない」ということはなく、外貨建て商品などを通して「得られる利益を期待して持つ」というのが、正しい解釈である言えます。
自国の通貨以外で持たなければいけない理由があるとすれば、「自国がデフォルトに陥るリスク」を感じている場合です。デフォルトとは、債券の発行体が、利子や元本の支払いが出来なくなることを指しますが、簡単に言えば「破綻」です。
「いずれ日本は危ない……デフォルトに陥る」と思うのであれば、より安全な国の通貨や国債購入を検討されるべきでしょう。そうなれば、「通貨分散をするべき理由」として、十分に成立すると言えます。
5.「商品分類」で分散するのではなく、「運用資産の種類」で分散する
次に、「預金」に安心感を抱いてしまう人が多い日本において、そのマインドから抜け出せない方へお話しましょう。
「資産分散」で投資未経験の人から出てくるワードで、「外貨」が多い中、商品カテゴリーで聞くと「外貨預金」が圧倒的に人気が高いという現実があります。おそらく「預金」という文字が「安全(元本が減らない)」と、イメージするのでしょうが、円預金と外貨預金は、リスク度合いで言えばまったく異なります。
過去の為替変動を振り返れば、1年で20%の損失が出ることはあり得ます。そして逆に言うと、20%の利益が出ることもあるのです。株式で考えれば、これくらいの期間での運用リターンは珍しくありませんが、「預金」という名が付く商品で、これだけの損益の幅は想像もしない方がいるのではないでしょうか?
ここで皆さんに伝えたいのは「預金」というワードで、「元本が保障されている」「変動はほとんどない」と、無意識のうちに思っていいるのではないかということです。
この類の理解が出来ていない人は、選択するポイントを「商品分類」で選んでいる傾向があります。先の「外貨預金」の例でいえば、同じ「預金」という商品分類でもリスク度合いはまったく異なることがわかります。他に同じ商品分類でも、運用資産が異なるものの代表で、「投資信託」があります。債券・株式・コモディティなど、運用資産によってリスク度合いや運用成果はまったく異なります。まったくの別種類の資産ですから当然です。
つまり、「資産分散」でポイントとなるのは、商品分類ではなく、運用資産の種類です。この事をしっかり理解し、本来の「分散」の必要性を見出し、資産を仕分けすることが重要です。
6.投資では「成長性」に資産をふりわける
ではどのように資産を分けるかですが、具体的には、「成長資産」である株式を保有することと、「時間軸」を考えた商品分けといったやり方があります。
現在20代~40代前半で、老後の資産形成にと考えているのであれば、資産の50%は株式または株式投資信託で保有もいいかもしれません。20年~40年という長期で運用成果を出せばよいので、「守り」に入り時間を無駄にするのは、機会損失であると考えます。時間も財産の一つと考える筆者は、長期運用で株式を購入することは、預金でお金を置いておくことでインフレ対応ができなくなることよりも、「リスクは低い」ということができます。
7.まとめ|「資産がすべて日本円」は危険ってホント?お金は上手に分散しよう!
資産分散というと難しく聞こえるかもしれませんが、例えば直近で使うための「円預金」、海外旅行が趣味の人が活用する「外貨建て預金やMMF」、子供のための「円建て保険」や「高金利債券」、老後の資産形成のための「株式投資信託」、ひと世帯の中で、この程度の仕分けが出来ていれば、十分でしょう。
お金は手元で持っていても、価値は増えないどころか、物価上昇が起これば価値は下がってしまいます。したがって、「預金」だけで保有するのではなく、成長資産への投資による「資産分散」を行うことが、大切なのです。年齢や運用期間に応じて、比率を見直すことで、合理的な資産形成が可能になります。ぜひ参考にしてみてください。