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1.はじめに
「婚約指輪は給与の3カ月分」「友人の結婚式ならご祝儀は2万円でOK」などといった、いつの間にか記憶に刷り込まれた金銭相場を多くの方が共有していると思います。それらのなかにはきっと、「適正な家賃は月収の3分の1」も含まれている方もいるでしょう。
では、実際にその金銭感覚が現代の日本社会に適しているのか?と考えた時、どうでしょうか。
人はお金を稼ぎ、そしてそのお金を必要なものと交換して生活しています。
お金が足りない場合、以下の2つのことをして足りる状態にする必要があるでしょう。
- 労働で稼ぐ金額を増やす
- 支出を抑え、1ヶ月の収支を必ずプラスで終わらせる。
さらに、お金を増やそうとした時に、はじめて「投資」という発想が出てくるのですが、
お金を増やす行為をする前に、上記の2つができるかが重要なポイントになります。
支出の一番多い固定費は、住宅費です。
この記事では、この住宅費について、「お金を増やす」という投資家の目線で考えていきたいと思います。
2.「適正な家賃は月収の3分の1」なんて今の時代に通用しない!
1人暮らしを始めようとしている新入社員や新婚カップルが物件を探す際、また、家の建て替えを考えている熟年夫婦のローン返済の目安にも、この「月収の3分の1」は大きく影響してきます。実際に「月収の3分の1」を基準にして物件を探した経験がある方も少なくないと思われます。
たとえば、月に手取りが21万円くらいの方の場合、計算上では、その3分の1である7万円が適正な家賃だそうです。
ちなみに東京などの大都市圏において、この7万円という数字は、物件のグレードにおいて非常に大きな分かれ目を指していることが多いように感じます。
2月、3月の引っ越しシーズンに時間や手間をかけて探せば、駅から近かったり、築年数が浅いといった好条件にもかかわらず6万円代という物件に当たることもあります。それでも、たいていはマンションではなくてアパートタイプが大半だと思われます。
ところが、家賃の条件を7万円代にまで上げると、好条件のマンション物件が急に増え始めます。また、エントランスロックやディンプルキーなどのセキュリティー面もグッと向上するため、とくに女性は「少々、高くても…」というように無理してでも借りる傾向があるようです。
そこで、少し節約すれば問題ないだろうと、7万5千円から8万円くらいのワンルームを借りてしまう方は少なくありません。しかし、これが後々、じわじわと家計を圧迫していきます。
もし8万円の部屋を奮発して借りてしまえば、手取りは残り13万円です。光熱費は電気・ガス・水道を合わせて1万円くらいにはなります。携帯やインターネットも合わせて2万円くらいにはなるでしょうから残りは10万円です。
残り10万円もあるなら楽に暮らしていけると考える方がいるでしょうが、会社勤めしていれば、食事は外食せざるえない場面も増えます。また、友人・恋人らとの交際費とは別に、仕事上で知り合った人たちと付き合う機会も多くなります。
さらに、スーツや靴もひと揃いというわけにはいきませんし、シワだらけなのもマズイですから、クリーニングや美容院代も学生の頃よりは増大するようです。そして、一人前の社会人として冠婚葬祭に出席することもあるため、急な出費に備えておく必要があります。
つまり、住宅費にこんなにお金をかけていたら、お金は増えていかないどころか、足りなくなる。
「適正な家賃は月収の3分の1」なんて今の時代に通用しない!
これが、現代日本で生きる目を背けてはならない現実なんです。
3.私たちの生活は「お金がかかるスタイル」になっている
前章のとおり、家賃は月収の3分の1が相応と言われていたのは、もう過去の話です。今の世の中、理想は4分の1以下にまで抑えなければ、大きなリスクを背負いかねません。
外出先で喉が乾けば、コンビ二や自販機で飲み物を買えばいい。忙しくて夕飯が作れない時は冷凍食品や惣菜を買えばいい。そんな便利さに私たちはすっかり慣れてしまいましたが、水筒を持って出かけたり、自炊をするより、明らかに費用はかさみます。また、スマホや携帯代金の支払いなど、かつてはなかった必要経費も生まれました。
近年の夏の酷暑にはエアコンをつけなければ、とてもじゃないけど太刀打ちできません。だから、当然電気代も上がります。挙げだしたらキリがありませんが、私たちの生活は以前より、確実にお金がかかるスタイルに変化しているのです。
その状態で月収の3分の1に上る家賃を支払うとなれば、側から見れば豊かに見えても、生活はカツカツになって当然です。貯金をする余裕など残されていません。蓄えがなければ、何かの拍子に家賃が払えない月が出てきても何ら不思議ではありません。そういう人たちにとって家賃滞納とは、毎月直面するリアルなリスクなのです。
4.お金をコントロールする意識がない
日本では、小さな頃からの「お金」に対する教育がなされていません。「お金のことをむやみに口にするのははしたない」というイメージが根強く、お金に関する知識を得る機会に恵まれません。
家賃を滞納する人たちを見ていて感じるのは、そもそもお金をコントロールするという意識がもてない人が圧倒的に多いと感じます。
今の生活を続けていれば家賃が払えなくなりそうな状況に陥っていても、じゃあ、生活レベルを落とそう、あるいはもっと安い部屋に移ろうといった逆算の発想がもてないのです。
5.借金はしてはいけない!
また、最近は「お金を借りる」ことのハードルがかなり低くなっています。
かつては、お金を借りるためには誰かに頭を下げるか、もしくは人目を避けて裏路地にある質屋に行って自分の大切な物と引き換えにするか、つまり何らかの痛みを伴う必要がありました。
ところが1970年後半から消費者金融が急速に普及し始め、気がつけばゴールデンタイムに前向きなイメージのテレビCMが堂々と流されるようになっています。消費者金融=怖いというイメージはすでに払拭されていると言ってもいいでしょう。
さらに進化した消費者金融は大手メガバンクの傘下に入り、消費者はより気軽に無担保でお金を借りられてしまうようになりました。窓口に行かずとも、ATMでも簡単にお金が借りられる時代になり、銀行で自分の預金からお金を引き出すのと大して変わらない感覚で、気軽に借金ができるのです。
ここで知っていて欲しいことは、お金を増やしたいとお考えならば、とにかく借金をしないことです。
借金をせず、毎月の収入と支出のバランスを一定にプラスで保つこと。
これさえ出来れば、お金は着実に溜まっていきます。
そのためにも、毎月の固定費でかなりの幅を占める「住宅費」の適正化は、お金を増やし豊かになるためにも大切なことなのです。
6.月収に対する家賃の割合は夫婦共働きでも4分の1程度が理想
今の日本で豊かな人生を作り出すためには、「月収の3分の1説」は間違いで、3分の1ではなく「4分の1(25%)」や「5分の1(20%)」くらいに抑えることが望ましいのかもしれません。
もちろん、夫婦共働きで2人合わせた手取りが50万円を超える家庭もあるでしょうが、だからといって17万円の部屋が適切とは思えません。もしかしたら貯金もできない生活を強いられることも十分にあり得ます。
では、この「月収の3分の1説」はどこから出てきたのでしょうか。確たることはわかりませんが、どうやら昭和の高度成長期には月収の3分の1が家賃でも楽しく暮らせていたため、基本的な相場のようになったとされています。
当時、景気は右肩上がりで年功序列・終身雇用制の企業がほとんどだったことから、コツコツ働いていれば必ず給与はアップしていきました。また、住宅補助を支給する企業も多かったそうです。
社員であっても、契約・派遣などの不安定な雇用形態で働くことも珍しくない現代には、「月収の3分の1説」はそぐわなくなってしまったと言えるでしょう。
7.まとめ|理想の家賃は「月収の3分の1」ってホント?月収に対する家賃を最適化するための考え方とは
人はお金を稼ぎ、そしてそのお金を必要なものと交換して生活しています。
お金が足りない場合、以下の2つのことをして足りる状態にする必要があるでしょう。
- 労働で稼ぐ金額を増やす
- 支出を抑え、1ヶ月の収支を必ずプラスで終わらせる。
まずは、自分の支出についてよく分析してみましょう。
そして、収入と支出のバランスが適正であるかを確認することが大切です。
支出の一番多い固定費は、住宅費です。
自分の人生にとって、何が一番大事なのか、優先順位をつけ、住宅費よりももっと違うことにお金を使った方が良いであるとか、そういうことを常に考えながら、お金と向き合っていく習慣をつけること。
家賃も含めて、収入を最適化する前に、支出の最適化を心がけることで、生活は意外と豊かになるものです。
また、いま物件探しの真っ最中の方には、ぜひ「月収の4分の1」を家賃の条件とすることをオススメします。確実に部屋のグレードは下がりますが、クレジットカードで家賃を支払うことが可能な不動産業者もあるので、ポイントをためられることもあり、将来的には間違いなくお得だといえます。