「相場急落」は冷静に!投資家がやるべきこと・やってはいけないこと

青木博史

1.はじめに 

金融市場において、「相場急落」は避けてはとおれない現象です。特に近年は、各国の中央銀行が大規模な金融緩和を実施していたり、各国の政府が財政出動をしていたりする影響で「カネ余り」が発生し、それが金融市場に流れてこんでいると言われています。

そのため、ボラティリティ(資産価格の変動幅)が上昇しているという指摘もあります。ボラティリティが上昇するということは、ちょっとした拍子で資産価格が大きく急落するリスクもあるということです。

いずれにせよ、資産運用をしている以上、相場急落はいつやって来てもおかしくありません。そこで今回は、相場急落のときに投資家がやるべきこと、やってはいけないことについて解説していきます。

ポイント

  • 「資産が減って怖い」というのは自然な感情
  • 株価が下がって「よいこと」もある
  • 長い目で資産を育てることが大切

2.悲観的なニュースが駆け巡ると…

例えば、つい昨日まで株価が上昇を続けていたのに、今日、突然大きく下落したとしましょう。

そうすると、まず何が起こるか考えてみてください。テレビや新聞などで、株式市場の先行きを悲観するニュースが駆け巡ることでしょう。そして、日本経済新聞などの報道でも、「過去最大の下落」「アジア株も全面安」「日米株乱高下」といったタイトルが並びます。

日に何度もこうしたニュースに接していると、知らず知らずのうちに、株式市場や投資に対してネガティブな印象を持ってしまうかもしれません。

3.「減るのが怖い」は自然な感情

実際、投資をしていて資産の評価額がマイナスになったという方もいるでしょう。

資産が減るのは誰しも怖いものです。「投資をやめて安全資産である預金にすべきでは」と迷うのは、とても自然なことだと言えます。

とはいえ、資産の評価額がマイナスのときに投資をやめると、損失が確定してしまいます。せっかく将来の資産形成をしようと考えていたのにとてももったいないことです。

それでは株価が大きく下がったとき、私たち個人投資家は、どうすればよかったのでしょうか。

4.相場急落のときに投資家がやってはいけないこと

まずは、上記のような相場急落のときに投資家がやってはいけないことについて見ていきましょう。

4-1.狼狽売りをする

狼狽(ろうばい)売りとは、相場の急落に動揺して、慌てて売り注文を出す投資行動を指します。相場急落の際に最もやってはいけないことだと言っても過言ではありません。

確かに結果として、売却することが正しいケースもあります。しかし、狼狽売りの最も悪い点は、深い考察もなしに、相場急落に慌てて反射的に売り注文を出すことです。相場急落の際は狼狽売りするのではなく、急落の要因や保有資産の状況、今後の展望などを考慮しながら行動するように心がけましょう。

4-2.相場と向き合うことを放棄する

相場が急落して保有資産が大きく目減りしたり、含み損が広がったりすると、相場と向き合うことを放棄する人がいます。いわば現実逃避です。

しかし、相場急落のときこそ、相場と向き合うことを放棄してはいけません。現実から目を背けずに、急落の要因や保有資産の状況、今後の展望などを考慮しながら行動するようにしましょう。

その上で「急落は一時的で、相場が回復する見込みはある。ここは何もせず持ちこたえよう」という結論になったのであれば、一時的に放っておくことは問題ないでしょう。ただし、その結論が論理的な理由ではなく「急落から目を逸らしたい」という願望から来ているものではないか、と自問することは非常に重要です。

4-3.深い考察もなしにショートポジションを持つ

深い考察もなしに、ショートポジションを持つことも避けたいところです。具体的には信用取引で空売りしたり、ベア型投資信託(ETF)を購入したりすることなどです。

確かに、ショートポジションを持った上でさらに相場が急落すれば、下落相場でも利益をあげることができます。しかし、ショートポジションは理論上損失が無限大であり、売買のタイミングが難しいことから、一般的に上級者向けの投資と言われています。

どうしてもショートポジションを持ちたい場合は、あらかじめ損切りラインを定めて、長くポジションも持たないように気をつけましょう。

5.株価が下がって「よいこと」もある

株価が下がると資産も目減りして悪いことだらけ!と考えがちですが、あながちそういう訳でもありません。考えようによっては、「割安に投資できるかもしれない」というメリットがあります。

短期スパンでは株価が急落し、それによる資産へのダメージはかなりのものになることも少なくありませんが、徐々に下落するのではなく、一時的に下げるということなので、時間と共に元に戻ることも十分に考えられます。

10年、20年、100年…と、長期的な流れで世界の経済を眺めてみた時、
戦争などの余程のことがない限りにおいては、基本は経済は上昇していくものです。

人間は常に進化していくことを期待しています。
ですから、ずっと永遠に悲観し続けるということは考えにくい訳です。

そうなると、急落というのは、ある意味で、割安に投資できる絶好のチャンスと言うことができます。

ただし、そのタイミングが急落直後であるかは、誰にも分かりません。
言えることは、急落したからと言って、悲観的になりすぎることはないということです。

6.相場急落のときに投資家がやるべきこと

では、ここからが本題です。

相場急落のときに投資家がやるべきことについて見ていきましょう。

6-1.まずはポートフォリオの状況を確認する

まずは自身のポートフォリオの状況を確認しましょう。日経平均株価やNYダウなどの株価指数が大幅に下落したとしても、自分の保有銘柄は思ったほど下落していないという可能性は想定されます。

もちろん、「株価指数の下落以上に保有銘柄が下落してしまった」となるケースもあり得ます。まずは自身のポートフォリオへの影響を確認することが大切です。

6-2.下落の要因と今後の展望を考える

次に下落の要因を確認し、今後の展望を考えてみましょう。「投資を始めた理由」や「その資産を購入した理由」を思い出して、それらの狙いや当初描いていたシナリオが崩れたかどうかを確認します。

基本的に投資家が取れる選択肢は「売却する」「様子を見る」「購入する(買い増しする)」の3つしかありません。下落の要因が一過性のものであり、時間の経過とともに元に戻るという結論に至れば、「様子を見る」という選択肢でも良いでしょう。

ただし、信用取引やFX取引、レバレッジ型投資信託などレバレッジをかけたポジションは、一旦クローズすべきかどうかをより慎重に検討するべきでしょう。これらはネガティブな方向にもレバレッジがかかり、予想が外れたときにポートフォリオに与えるダメージが大きいからです。

6-3.一過性の下落と判断したときは押し目買いを検討する

投資の基本は「安く買って高く売る」です。資金に余裕があり、かつ一過性の下落と判断した際は、押し目買いも検討したいところです。ただし相場急落後はしばらくボラティリティが大きいことが多く、投資予定資金を2分割し、2回に分けて押し目買いするなど、購入時期を分散させると良いでしょう。

積み立て投資に関しては、相場急落時は相対的にたくさんの資産を購入できるため、中長期的に見ると購入平均単価の引き下げにつながるケースも多くあります。積み立て投資をしている人は、相場急落のときだけいつもより多めの金額を購入するなどのアイデアも考えられるでしょう。

7.まとめ|「相場急落」は冷静に!投資家がやるべきこと・やってはいけないこと

今回は、相場急落のときに投資家がやるべきこと、やってはいけないことについて解説しました。

資産形成をしたい人にとって、いちばん大切なことは、長い目でリターンを最大化させることです。つまり今の資産が「増えた・減った」ではなく、将来必要になったとき、着実に成長していればいいという考え方が大切です。

成功のポイントは、「淡々と続ける」こと。株式市場が急落するとあわててしまうかもしれませんが、一時的なマイナスは、資産を育てていく長い道のりにおいては誤差に過ぎないと思って、どっしり構えておけばいいでしょう。

資産運用をしている以上、相場急落はいつやって来てもおかしくありません。

そのような相場に対して、よいときも悪いときも一喜一憂せず、淡々と資産運用を続けることが、長い目で資産を育てていく鍵となります。

相場急落の可能性を常に想定し、投資家がやるべきこと、やってはいけないことをよく理解して、正しい行動を取るようにしていきましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です