投資初心者が知っておきたいテクニカル指標5選と使い方のポイントとは

青木博史

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1.はじめに

株式投資による資産運用で成果を出したいのなら、しっかりとした戦略を練って臨む必要があるという話は、投資の世界では常識です。しかし、投資初心者がこの指摘をされても、正直困ってしまうのではないでしょうか。

「しっかりとした戦略」ってどうやって練るものなの?と疑問を持たれる人も多いかと思います。

株式投資においてはテクニカル指標を使った戦略などがよく使われていますが、投資初心者にとって、この「テクニカル指標」の見方や戦略の立て方について知ることはハードルが高いかもしれません。

そこで、この記事では、戦略的に株式投資で成果を出すために知っておきたい4つのテクニカル指標と、これからテクニカル分析を使いはじめる初心者の方にとって、おすすめの使いやすいテクニカル分析を紹介します。

この記事でわかること

  • 初心者が使いやすいテクニカル分析
  • テクニカル分析を使っていく際に重要なこと
  • 情報とテクニカルどちらを優先すべきか

2.ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析とは?

まず株式投資における戦略は、大きく「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」に分類されます。

ファンダメンタルズ分析とは、企業の業績や財務状況などを分析しながら投資銘柄を選んでいくアプローチ方法を指します。一方でテクニカル分析は、株価の日々の動きをチャート上で確認しながら売買のタイミングを判断していく方法のことです。

このどちらの戦略が良い、悪いということはありません。より慎重に臨むなら、その両方の分析方法を使いこなすことが最終的には重要になるでしょう。今回はテクニカル分析に焦点を当てて紹介していきますが、ファンダメンタルズ分析についても学ぶ必要があることは知っておいたほうが良いと言えます。

なお、ファンダメンタルズ分析は長期目線での投資で特に重視され、短期投資ではテクニカル分析が重視されるケースが多いという特徴があります。

3.テクニカル分析のメリット

テクニカル分析には以下のようなメリットがあります。

3-1.比較的簡単に売買ポイントを算出できる

テクニカル分析は、経験の少ない方でも比較的簡単に売買のポイントを算出できます。テクニカル分析の手法は様々ですが、計算方法が決まっていることが多いため、その式に当てはめることで簡単に売買の水準を求めることができます。複雑な財務諸表を分析する必要もありません。

3-2.売買の水準を視覚的に判断しやすい

テクニカル分析には過去の価格推移をあらわすチャートが用いられます。過去の推移から現在の水準や、大きなトレンド(上昇トレンドか下落トレンド、横ばい)などを視覚的に判断しやすいと言えます。

3-3.機関投資家と情報量が同じ

テクニカル分析を用いる場合、株価等のデータは公開されているため、情報量は機関投資家と同じです。つまり、機関投資家と同じ土俵で戦うことができるというメリットがあります。

3.テクニカル分析のデメリット

対して以下のようなデメリットも存在します。

3-1.臨機応変な対応ができない

テクニカル分析のデメリットは、過去のデータを基に将来を予想するため、企業が不祥事を起こし株価が急落した場合など、過去の動きと異なる変化が起きた場合には臨機応変な対応ができないことがあります。

3-2.分析者によって結果が異なることも

エリオットウェーブ(相場にはパターンがあり、一定のサイクルを描きながら繰り返すという理論)のようなチャート分析をする場合、分析者によって結果が異なることがあります。明確な公式があるわけではなく、人それぞれで分析方法が変わるためです。そのため、他者の分析を鵜呑みにすることは危険です。

3-3.分析方法が複数あるため混乱することも

チャートの分析方法は、トレンド系とオシレーター系(揺れ幅の分析)があります。トレンド系では、酒田五法、移動平均法、一目均衡表、ボリンジャーバンド、パラボリック、ポイント・アンド・フィギア、マーケットプロファイル、GANN理論など、オシレーター系(振れ幅の分析)ではRSI、ストキャスティクス、DMI、MACDなど様々な手法があります。

それぞれ、計算方法や手法が異なります。分析手法が複数あるため、その時々により適した分析が異なってしまうことがデメリットと言えます。

3-4.常に正しいとは限らない

テクニカル分析は常に正しいとは限りません。チャートには「だまし」という現象が頻繁におきることが知られています。このだましとは、チャート分析上では売買サインが出たものの、実際には元のレンジ水準に戻り、売買サインが取り消されてしまう現象です。

チャートポイントは分かりやすいため、機関投資家やヘッジファンドのような機敏な動きをする投資家がチャートポイントを逆手にとることもあります。

3-5.ファンダメンタルズを無視するため、時には大損することも

テクニカル分析は、価格を重点に置くため、PER(一株あたり純利益に対する株価の倍率)などのファンダメンタル情報が無視されます。そのため、株価が下落に転じるとPERの適正水準まで株価が下落するリスクが高く、その結果損失が膨らむ可能性があります。

3-6.常に勝てるわけではない

チャート分析をメインとする市場参加者は短期売買が中心です。短期売買はゼロサムゲーム(参加者の全員の損益の総額がゼロ)の色彩が濃い取引です。そのため、常に勝てるわけではありません。

4.2つのテクニカル分析:トレンド分析とオシレーター分析

では、この章からはテクニカル分析について具体的に説明していきます。
まず最初に、テクニカル分析は大きく「トレンド分析」と「オシレーター分析」に分類されるという点から話を進めます。

4-1.トレンド分析とは何か?

トレンド分析は、時系列で株価の変化を見ながら、その株価が将来的にどう動くかを分析するアプローチ方法です。トレンド分析の方法様々だが、例えば「移動平均線」や「一目均衡表」などのテクニカル指標を使った方法があります。

4-2.オシレーター分析とは何か?

オシレーター分析は、相場の変化の大きさで売買の判断をするアプローチ方法で、様々なテクニカル指標を用いて買われ過ぎや売られ過ぎを判断していきます。オシレーター分析で使うテクニカル指標としては「RSI」や「ストキャスティクス」などがあります。

5.投資初心者におすすめの5つのテクニカル指標

テクニカル分析は、トレンド分析とオシレーター分析に分類され、それぞれの分析方法で使われるテクニカル指標があることを説明してきました。

株式投資をはじめたばかりの初心者の方だと、どのテクニカル分析を使えばいいのか分からずに、数ある分析の中で迷ってしまう事があります。

特にまだトレードの経験が浅い場合はどのようなテクニカル分析があるのかを知らなかったり、テクニカル分析を選んでも使い方が分からないという場合もあるでしょう。

そこで、ここでは、株初心者の方でも使いやすいおすすめのテクニカル分析を紹介し、それぞれのテクニカル指標をどのように使うのか、具体的に解説していきたいと思います。

5-1.チャートの基礎でもあるローソク足

チャートの基礎でもあり形成される形状によって株価の変動を予測することができるローソク足が、初心者にとってひとつ目のおすすめのテクニカル分析の指標となります。

ローソク足と聞くとテクニカル分析では無いというイメージがあるかもしれませんが、ローソク足は特定時間の株価の値動きを表したものであり、リアルタイムの値動きと共に投資家心理をダイレクトに知ることができます。

そのため、ローソク足の形状を確認することによって株価の値動きを予測することができるテクニカル分析となるのです。

ローソク足を使ったテクニカル分析の基本としては、株価が上昇中に長い上ヒゲが出現した場合には株価が下降に転換する可能性があると予測することができたり、ローソク足の実体がほとんど無く上下にヒゲだけを残したローソク足もトレンド転換のサインとして使うことができるといったものがあります。

ローソク足を使ったテクニカル分析は、他のテクニカル分析よりも覚えておくだけで使えるものが多いため、代表的なものだけでも覚えておくと良いでしょう。

5-2移動平均線(トレンド分析で使用)

一定期間の終値を平均線の線で表示をした移動平均線が、初心者にとって二つめのおすすめとなるテクニカル分析指標となります。

移動平均線は初心者からプロまで数多くの投資家が使っている、最も一般的なテクニカル分析指標です。

移動平均線を使ったテクニカル分析の基本は、移動平均線の向きを確認する分析となります。

移動平均線が上向きであれば株価に上昇の勢いがあり、下向きであれば株価に下降の勢いがあると判断することができるのです。

使われる移動平均線は、チャートを日足・週足・月足で見るかによって変わってきます。例えば日足チャートの場合は5日・25日・75日の平均線を、週足チャートの場合は13週・26週・52週の平均線を使うのが一般的と言われています。

<チャートの種類ごとに使われる一般的な移動平均線>

日足 週足 月足
短期の平均線 5日 13週 12ヵ月
中期の平均線 25日 26週 24ヵ月
長期の平均線 75日 52週 60ヵ月

移動平均線は1本だけではなく2本や3本、チャートソフトによってはそれ以上の本数も表示させることができ、それぞれ別々の期間に設定をすることで、さらにレベルの高い分析を行うことができます。

5-3.一目均衡表(トレンド分析で使用)

「一目均衡表」は、1日の株価の変動を示す「ローソク足」や移動平均などから計算した基準線・転換線・遅行線などの補助線を使って「雲」を描き、その雲の厚さや株価との位置関係などから、その後の株価の方向性を予測するテクニカル指標です。

雲をローソク足が上抜いたタイミングや、基準線を転換線が上抜いたタイミングなどがそろったときが強い「買いのシグナル」とされています。各証券会社の取引ツールを使えば、先ほど紹介した移動平均線も一目均衡表も比較的容易に確認することが出来ます。

5-4.RSI(オシレーター分析で使用)

RSI(Relative Strength Index)は、オシレーター分析で使用されるテクニカル指標で、日本語では「相対力指数」と呼ばれます。RSIは銘柄によって0~100%で表現され、一般的には20~30%だと売られ過ぎ、70~80%だと買われ過ぎと判断されることが多いという特徴があります。

5-5.ストキャスティクス(オシレーター分析で使用)

ストキャスティクスもRSIと同じように、売られ過ぎ・買われ過ぎの判断に役立つテクニカル指標です。「%K(Fast)」と「%D(Slow)」という線で表現され、相場に敏感に反応するのが「%K」、遅く反応するのが「%D」となっています。

「%K」も「%D」も1~100%で示すことができます。ちなみに一般的には「%D」のほうが重要視されており、20~30%以下で売られ過ぎ、70~80%以上で買われ過ぎと判断されます。

6.テクニカル分析の使い方

テクニカル分析を実際に投資で使う際のポイントは以下の通りです。

6-1.複数のテクニカル分析手法を用いる

テクニカル分析には複数の手法があります。それぞれ算出方法が違うため、チャートにより売買のサイン(タイミング)が異なることがあります。そのため、手法別にチャートポイントや相場の転換点を一つの表にまとめ、相場の判断材料にすると良いでしょう。

6-2.負けは素直に認める

テクニカル分析は完全なものではありません。損失が出てしまった場合は素直に負けを認め、損失の拡大を防ぐようにしましょう。素早い損切りと、負けの原因を振り返ってPDCAを回すことが重要です。

7.テクニカル分析は練習や検証によって使いこなすことが必要

投資初心者は、自分の使うテクニカル分析を選んだら、次はテクニカル分析を使いこなせるように練習や過去のチャートから検証を行っていくことが重要です。

残念ながら、テクニカル分析は手法を理解したとしてもすぐに利益を上げ続けられるようになるかというと、決してそんなことはありません。

どんなことでも起こるのが相場の世界ですから、100%勝てるわけでは無いのです。

しかし、テクニカル分析の手法を身に付けて練習をすることにより、確実にトレーダーとしての技術は向上していきます。

優秀なトレーダーは、あらかじめいくつかのストーリーを用意していて、次にこういう動きをしたらこうするというイメージをしながらトレードをしています。

将棋や囲碁などで戦略を考えながら戦うのと同じですね。

さまざまな過去のチャートを見て株価の動き方を学習し、自身の株技術として身に付けていく必要があります。

7-1.株は練習と実践を繰り返して上達していく

テクニカル分析を自分の中に落とし込み、使いこなせるようになるためにはトレードを行う銘柄の過去チャートを確認し、自分が使うテクニカル分析がどこで機能しているのかを確認する必要があります。

そうした検証を地道にすることによって、テクニカル分析の癖や特徴を覚えることができ、チャートの動き方によって機能しやすい場面などが見えてきます。

そして、ある程度自分の中でテクニカル分析が使えるようになれば、実戦のチャートで分析していきましょう。

実戦でも、何度もテクニカル分析を行い正しく分析ができているのかを確認しましょう。

株で上達をするためには反復練習の如く繰り返し行うことが大切です。

本気で検証や練習を積み重ねていくことによって、その後の結果が変わってきます。

はじめから勝てないのは当たり前で、諦めずに努力を続けていくことで勝てるようになっていくということを忘れないでください。

7-2.情報ではなく株の技術で利益を重ねていこう

株で勝つために一生懸命ネットなどで企業や経済についての情報を得ようと頑張る人がいます。

経済の状況や企業の業績などから分析を行うことをファンダメンタルズ分析と言いますが、基本的にファンダメンタルズで個人が勝つのは非常に難しいと言えます。

株価に影響を与える企業の業績や新商品の発表、日本経済の指標発表などは株価に織り込み済みという場合がほとんどで、自分たちの元に情報が入ってから株のトレードを行っていては遅い可能性が高いからです。

つまり、ファンダメンタルズ要因で勝つことは難しいため、投資家心理が反映されているチャートから分析を行うテクニカル分析によってトレードを行う方が勝率が高いと言えます。

個人ではどうしても情報戦となると不利になることが多いため、自分自身のテクニカル分析や手法による株の技術を磨いていくことが、勝ちにつながり利益を積み重ねていけます。

そのため、どのような銘柄でも利益を狙って行けるように、テクニカル分析の練習を行い技術を磨いていきましょう。

7-3.株の技術を磨くためにFXをするのも一つの手段

株式投資で短期間に利益を得たいと考えるのなら、練習のつもりでFXのチャートを見てトレードを繰り返すのも短期間にトレード技術のレベルを上げるのには適していると言えます。

FXは、2国間の通貨の強弱でチャートが形成されるので、テクニカル分析が効きやすいという特徴があります。

また、土日以外の平日ならば、24時間取引ができるので、忙しい人であっても参加がしやすいということもあり、トレード技術を磨きたいであれば、積極的に活用すると良いでしょう。

8.まとめ|投資初心者が知っておきたいテクニカル指標5選と使い方のポイントとは

  • 初心者にはローソク足と移動平均線がおすすめ
  • テクニカル分析は練習をして身に付けることが重要
  • 個人だと情報でのトレードは難しいため自身の技術を磨いた方が良い
  • トレード技術を磨くためにFXをするのも一つの手段

いかがでしたでしょうか。

初心者にとって使いやすくおすすめのテクニカル分析はローソク足と移動平均線となります。

テクニカル分析はいきなり使えるようになるものではないため、まずは過去のチャートで検証し練習を重ねていきましょう。

株は技術を磨いていくことによって、稼げる力をつけられるものでもあります。

すぐに利益に直結するわけではありませんが、努力は後の利益につながっていくため、日々チャートを確認し練習を継続することをおすすめします。

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