1.はじめに
仕組債は、比較的商品性が複雑で、投資初心者にはわかりづらい金融商品です。
通常の国債などに比べて高いリターンが期待できることから、富裕層から人気の「仕組債」
そこまでのリターンは望めないかわりに投資初心者から人気の「投資信託」
この記事では、それぞれの特徴と違いを分かりやすく解説していきたいと思います。
2.仕組債と投資信託
この章では、「仕組債」と「投資信託」
それぞれが具体的にどういった金融商品を指すものなのかについて説明します。
2-1.仕組債とは
「仕組債」とは、一般的な債券にはない特別な「仕組み」をもつ債券です。債券とは、国や企業などが投資家からお金を借りるために発行する有価証券のことを指します。そこにスワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)という「仕組み」を加えたものが仕組債です。投資家や発行者のニーズに合う満期やクーポン(利息)、償還金などを比較的自由に設定することができます。
2-2.投資信託とは
投資信託は、投資家から集めたお金を一つの大きな資金(ファンド)としてまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などで運用します。その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される金融商品です。
どちらも上手に活用すれば資産運用の大きな助けになります。
3.仕組債と投資信託の違い
では、次に仕組債と投資信託には、どのような違いがあるのかについてお話ししましょう。
両方とも元本割れリスクがある点は共通していますが、リターン(投資を行うことで得られる収益)の決定方法などに違いがあります。
仕組債は、例えば、参照する指数が変動したとしても、あらかじめ定められた範囲内であれば、リターン(利息)は原則として一定です。加えてノックイン事由と早期償還の仕組みがあります。 ノックイン事由とは、観察期間中の参照指数が一度でもノックイン判定水準以下になることです。ノックイン事由が発生した場合、最終評価日の参照する指数の終値次第では元本割れし、損失が発生する可能性があります。 早期償還とは、ある条件を満たすことで満期を待たず債券が償還することです。早期償還する場合は、ノックイン事由の発生の有無にかかわらず償還金額の100%で償還されるため元本割れは発生しません。
投資信託は、リターンは原則として一定ではありません。売却時の基準価額が、購入時の基準価額よりも高ければ利益が出る一方で、低ければ元本割れになります。売却時の基準価額がいくらになっているかによってリターンが違ってきます。
4.そもそも仕組債とは
仕組債の発行者は、主に海外の金融機関です。発行者がアレンジャーと呼ばれる証券会社を通じ資金調達を行います。この仕組債を購入した投資家は定められた利払日に、比較的高いクーポン(利息)を手にすることができます。この条件だけを見れば通常の債券では実現できない高いリターンを狙えることが分かるでしょう。
しかし、こうした仕組債には通常の債券にはない「ノックイン判定水準」というものが設定されています。例えば、日経平均株価を参照する仕組債の場合、「ノックイン判定水準」は、「当初日経平均株価」の75%などと設定されます。「当初日経平均株価」が1万8,000円ならば、75%の水準である1万3,500円がノックイン判定水準となります。
この仕組債を保有している間に日経平均株価終値が一度でもノックイン判定水準である1万3,500円を下回った場合には、「額面金額×最終日日経平均株価/当初日経平均株価」(ただし、額面金額の100%が上限となります。)といった算式にあてはめた償還金額で満期時に償還されることになり、元本割れの可能性があります。満期償還額は額面金額の100%を超えることはありません。
では、逆に日経平均株価が上昇した場合にはどうでしょうか。通常、利払い日の前に早期償還判定日というものが設定されています。この判定日に日経平均株価が早期償還判定水準以上となれば、債券は満期を待たずして早期償還されることになります。 早期償還判定水準は、「当初日経平均株価」の110%などと設定されます。「当初日経平均株価」が1万8,000円とすると、早期償還判定水準は1万9,800円となります。 このように仕組債においては「ノックイン判定水準」と「早期償還判定水準」が重要です。
仕組債は金利や通貨を交換するスワップやオプションといったデリバティブを利用することで投資家や発行者のニーズにあったキャッシュフローを生み出す構造となっています。満期やクーポン(利子)、償還条件は投資家や発行者のニーズに合わせて自由に設定することが可能です。
販売時期や需給関係などからさまざまな条件の仕組債が発行されています。日経平均株価が2万5,000円を超える水準の時期に発行される仕組債と、日経平均株価が2万円の時期に発行されるものとでは当然条件が異なります。日経平均株価の終値が2万円の時に発行されたもので、ノックイン判定水準が75%であれば、日経平均株価終値が1万5,000円でノックインします。 ノックインすれば満期時に額面金額を割り込む可能性があります。
しかし、設定されるノックイン判定の水準も、発行時の相場環境や需給、仕組債の期間によって変化します。商品によって、ノックイン判定水準が70%のものもあれば、50%のものもあります。また早期償還判定水準についても同様に100%のものもあれば105%のものもあります。期間についても1年もあれば5年もあります。対象も、日経平均株価だけではなく、他国の株式指数や通貨など、さまざまな条件の仕組債が発行されています。
5.仕組債の特徴
この章では仕組債の特徴について解説します。仕組債には、主に以下のような特徴があります。
5-1.相対的に高い利回りが期待できる
仕組債は、一般的な債券にはない特別な「仕組み」によって相対的に高い利回りを期待することができます。同じような信用力(格付)や同じような期間の「一般的な債券」と比較して利率を高く設定することが可能です。
5-2.一定のリターンが期待できる
仕組債の大きな特徴は、条件があえば一定のリターン(利息)が期待できることです。参照する指数が変動したとしても、あらかじめ定められた範囲内であれば、リターンは原則として一定です。ただし、早期償還の仕組みとノックイン事由が生じた場合は損失の可能性があるので注意が必要です。
5-3.一般的な債券にはない特別な「仕組み」をもつ債券
仕組債は、投資初心者からすると、商品性がやや複雑です。一般的な債券にはない特別な「仕組み」は、相対的に高い利回りをもたらしてくれますが、一定の条件に該当すると元本割れが発生します。そのため一般的な債券と同じ感覚で投資せずに、仕組債の商品性を理解し「どのようなときにどれくらい損失が発生するのか」を把握したうえで投資するようにしましょう。
5-4.早期償還されると、想定した運用成果が得られない
早期償還条項が付いている場合、最終償還日より前に早期償還されることがあります。損失は発生しないものの、以後の運用において早期償還されなかった場合(満期まで運用した場合)に得られる利息と同等の運用成果が得られない可能性があります。
5-5.リターンは一定でも損失は一定ではない
仕組債から得られるリターンは、あらかじめ定められた条件を満たしていれば、原則として一定です。一方で損失は一定ではありません。ノックイン事由が発生した場合、最終評価日の参照する指数の終値次第では元本割れし、損失が発生する可能性があるので注意が必要です。
5-6.途中売却ができない場合が多い
仕組債は、流動性が低く途中売却が難しいことも注意点の一つです。もし売却できたとしても、投資元本を大きく割り込む価格で売却せざるを得ない可能性もあります。仕組債は投資であるため、余裕資金で行うことが大前提となります。
6.投資信託の特徴
続いては投資信託の特徴について解説します。投資信託は、主に以下のような特徴があります。
6-1.投資の専門家が運用してくれる
投資信託は、専門家(ファンドマネージャー)により運用される商品です。投資初心者の場合、「投資をはじめよう!」と思っても、何を(株式、債券、不動産などの資産(商品))、いつ(今が買い時なのか)、購入すれば良いか分からない人も多いでしょう。投資信託ならば専門家に運用を任せることができるので、初心者でも購入しやすい商品と言えます。
6-2.少額から投資できる
投資信託は、少額から購入できます。一般的に株式投資や債券投資はある程度まとまった資金が必要です。しかし投資信託であれば、1万円程度から手軽に始めることも可能です。投資を始めるハードルが低いため、投資初心者にとってはうれしい点だと言えます。
6-3.分散投資ができる
投資信託は、前述した通り運用の専門家が国内外の複数の株式や債券などの日々の値動きをチェックしながら運用を行います。そのため投資信託に投資することで、分散投資を行うことが可能です。
6-4.毎営業日基準価額が公表されるので値動きがわかりやすい
原則として毎営業日、基準価額が公表されているので投資信託は資産価値や値動きがわかりやすい金融商品と言えるでしょう。また決算ごとに監査法人などによる監査を受けているため、透明性も高いと言えます。
6-5.コストがかかる
投資信託は、原則としてコストがかかります。コストは、購入時手数料や信託報酬などがあり、ファンドによって内容が異なるため注意が必要です。
6-6.購入時の基準価額を下回る価額で売却すると元本割れになる
投資信託を売却する際の基準価額が、購入時の基準価額よりも高ければ利益が出る一方で、低ければ元本割れになります。投資信託を売却する際は基準価額の値動きに注意しましょう。
6-7.購入する際は、前日の基準価額を目安にする必要がある
投資信託の基準価額は1日に一つの価額として公表されます。また基準価額が公表されるのは、投資信託の取引の申し込みを締め切った後です。そのため、前日の評価額が、投資家たちが知り得る直近の基準価額となります。そのため投資家が購入する際は、前日の基準価額を目安にして取引を行う必要があります。
7.まとめ|資金量などの状況によってどちらを選ぶか判断しましょう
ここまで仕組債と投資信託の違いと特徴について解説してきました。
仕組債と投資信託は異なる金融商品ですので、どちらが良い悪いという話ではありません。
仕組債と投資信託のそれぞれの特徴を理解して状況によって使い分けていきましょう。